後半

昨日の続きです。

具体的な性描写はありませんがそういう雰囲気はあります。ご注意ください。







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明かりの落とされた紫煙の漂う部屋の中、時折表を行き来する車のライトが光の線になって走り過ぎる。
適当に点けたラジオの音が小さく流れてくるのを聞きながらひろゆきはベッドの上で胡坐をかく男の前に立っていた。
この事態を引き起こすに至った自分の迂闊さ加減に気分は滅入るが、どうにかして乗り切るしかなかった。この程度の余興にも付き合えない退屈な若僧だと思われたくはない。
煙草を吹かしながらうっすらと笑む意地の悪い恋人をじっと見つめ、覚悟を決めたひろゆきは水色の上着を脱ぎ床に膝を着いた。縞のシャツに手を掛け、かつて服を脱ぐ位のことをこんなに意識したことがあっただろうかと考える。しかもこの寒さ・・。

ＴＶかなにかでピンクや紫の照明に照らされ回転する舞台の上で女が音楽にあわせ思わせぶりに身体をくねらせながら衣装やらストッキングやらを脱いでゆくというのを見たことはあった。あったことはあったが、男の自分があれをやったところで面白いだろうか・・と考えかけてやめた。
とにかく思いついたポーズを片っ端から試してみる。
床に腰をおろし手を後ろについて膝を立て足を組んでみる・・背を仰け反らせ襟足に手をまわししなをつくってみる・・
しかし横になろうが縦になろうが、どれだけひいき目に考えてもイメージしていた色っぽいものとはかなりかけ離れたなにかになりつつあるという感は拭えない・・
にわかに絶望的になりつつふとベッドへ目を遣ると胡坐をかいた膝の上にひじをついてぼんやりとしている男の様子が映った。まずい。ひろゆきは焦った。

床に寝そべって足をあげながらばたばたとジーンズを脱ぎにかかる。
こうなったらもう色気だなんだと言ってはいられない。ストリップとはかなり違うような気もするがキャバ嬢のそれだろうがホテトルのそれだろうが躊躇うべきはそんなところではない。
ひろゆきは床にジーンズを投げ付け両手をつくと、枕を背にして壁にもたれる赤木の沈むベッドへ這っていった。


耳元で煩く鳴り響く心臓の音を聞きながらひろゆきは男の両側に腕をついた。
投げ出された脚の上に跨がると上体を倒し触れるくらい間近でゆっくりと前後になぞらせてゆく。
唇を左右に引き結び、ぎこちなく行為を連想させる動きを繰り返す。

紫煙を吐き出しこちらを見据える朱がかった目を上目遣いに見ているうちにいくらか腹が座った。
肩越しに腕を伸ばし窓枠に手をかけ男と向かい合うかたちで浮かせた腰を上下させる。
こんな格好は全く経験がない・・ひろゆきは顔が酷く熱くなるのを感じた。
これで詰まんないなんて言ったら向こう数日間その毛布と一緒に巻きついてやる・・

ところがテンパり続けるひろゆきに引き換え赤木の表情に大した変化は見られなかった。
胸の底を冷たいものが浸してゆく。
通りの明かりにぼおっと照らされる白い髪を見つめ、ひろゆきはやはり思う。
この人の考えてることはよくわからない・・
ひろゆきを見上げる男の口元が僅かに緩んだ。


「そんな顔してるんじゃ客は逃げちまうぜ」
声と同時に尻に両手が掛かったのを感じひろゆきはほとんど飛び上がった。
耳まで赤くなった顔で直ぐにむすっと言い放つ。
「・・・踊り子には手を触れないようお願いします」


赤木は一瞬目を丸くし、両手を挙げ笑い出した。
「こりゃ悪かったな・・」
笑って目が閉じられると鋭さはたちまち消え子供のような顔になる。ひろゆきはそれを目にする度にこの男がそんな顔をすることを思い出すのだ。
男は煙草を揉み消し、枕元に置いた札をつまみ上げると自分の上に跨る青年の腰に手をまわしトランクスに挿み込んだ。顔を赤くしたままぽかんとみつめるひろゆきに口の端で笑う。
「・・チップだ。取っといてくれ、踊り子さん・・」




＜終＞
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直後押し倒されるのは赤木さんのほうなわけなんですが




長々と読んでくださった方々ありがとうございました

ひろを揺さぶるのが楽しい赤木さんが好きっていう・・


このくらいのことをただ書くのに何を苦しんでるんだか（しかもいろいろおかしい）と思われる方も少なからずいらっしゃるかと思われますが全く同感です